緑内障治療について
緑内障とは?
緑内障は、何らかの原因で視神経が障害され視野(見える範囲)が狭くなる病気で、眼圧の上昇がその病因の一つと言われています。
緑内障の症状
一般的に、自覚症状はほとんどなく、知らないうちに病気が進行していることが多くあります。視神経の障害はゆっくりとおこり、視野(見える範囲)も少しずつ狭くなっていくため、目に異常を感じることはありません。急性の緑内障では急激に眼圧が上昇し目の痛みや頭痛、吐き気など激しい症状をおこします。時間が経つほど治りにくくなるので、このような発作がおきた場合はすぐに治療を行い、眼圧を下げる必要があります。
早期発見、早期治療
自覚症状がない緑内障に対して、最も重要なことは早期発見・早期治療です。一度障害された視神経をもとにもどす方法はなく、病気の進行をくい止めることが目標となります。したがって出来るだけ早期に緑内障を発見し、治療を開始することが大切です。
薬物療法
眼圧を下げるために使われる薬は、主に房水の産生量を減らしたり、房水の流れをよくする薬です。最初は1種類の薬で様子をみながら、途中で変更したり、また2~3種を併用することもあります。
選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
目詰まりしている線維柱帯にレーザーを照射して房水の流れを良くする治療です。
原発開放偶角緑内障、嚢性緑内障、高眼圧症などで、点眼だけでは不十分な症例に対して点眼薬治療と併せて行います。SLTは低エネルギーで短い波長のレーザーを用い、線維柱帯の色素細胞のみを選択的に狙います。
周辺の組織に熱損傷などのダメージをほとんど与えないため、効果的に繰り返し治療が行えます。
手術療法
i Stent手術
白内障手術と同時に行い、シュレム管にistentを埋め込むことで、房水の排出を増加させ眼圧を下げます。白内障手術と同時に行うことによって白内障単独手術と比較してより低い眼圧値を得ることを目的としています。
Istentの選択基準として以下5つすべて満たしていることが条件となります。
- 白内障の合併した軽度~中等度の開放隅角緑内障。軽度~中等度の開放隅角緑内障を有しており、静的視野計でMD値が-12dBよりもよく、固視点近傍10°以内に絶対暗点が無い症例。
- 20歳以上の成人であること。
- レーザー治療を除く内眼手術の既往歴がないこと。
- Shaffer分類Ⅲ度以上の開放隅角で周辺虹彩前癒着を認めないこと。
- 緑内障点眼を1成分以上点眼していること。(正常眼圧緑内障の症例は上記 1. ~ 4. の基準に加え、点眼2成分以上併用し、眼圧が15mmHg以上の症例のみとする。)
エクスプレス手術
目の外から穴を開け、房水を継続的に外に流出させることで眼圧を下げる手法です。成功すれば眼圧が8~10に下がるというメリットがありますが、目の外と内部が交わることで感染が起こりやすくなるというデメリットもあります。また、この方法も長期的にみると、眼圧が再上昇し再手術を要するケースも少なくありません。
近年、「Express・エクスプレス」と呼ばれるステンレス製のシャントdeviceが保険適応となりました。
従来のトラベクレクトミー(線維柱帯切除術)と比較して下記のような利点があります。
- より簡便に房水流出経路を作成でき、規格化されたデバイスにより、一定量の房水の流出が予測可能
- 線維柱帯切除術と同等の眼圧下降効果
- 低侵襲で炎症を発症する可能性が低く、また、術後の合併症が線維柱帯切除術と比較して少ない
- 術中の眼圧変動が小さく、手術時間が短縮
- 創傷部位の回復、および術後視力の回復が線維柱帯切除術と比較して早い